愛知県豊川市 医療法人共立荻野病院 内科・胃腸科・アレルギー科・リハビリテーション科

豊川海軍工廠戦没者慰霊祭　昭和60年10月８日
はじめに
昭和六十年十二月　杢野美保子(学徒引率教員/本校旧教員)
（１）
　木犀の香りは何時もあまずっぱく、遠いむかしを懐しく、ものがなしく憶い出させます。遠い野っ原から続く、少しうす色の青空・想い出の中味によっては、その空は透明な深い碧になったり、紺青になったり、仄かな靄のヴェールで覆われたり、時にはその中を白い綿雲がよぎって行ったりもします。そんな郷愁を誘うような金木犀の香りの漂う下で、抹香の煙の中に一人一人の在りし日の姿を想い浮べ、祈念し、亡き人々とのしばしの語らいの時を持つことができました。

　今年六月二十三日に、全く突然に校長及部十寸保先生からお電話を頂戴いたしました。学園創立六十周年を期し、豊川海軍工廠関係戦没者の慰霊を考えているので当時の模様を聞かせてほしいという趣旨のお電話でした。「丁度戦没四十年にもなる･････」との仰せで、なるほどあれからもう四十年もの時が経過したのか。四十年とは随分永い年月なんだな･････と。まるで当たり前のことであるのに、あらためて過ぎ去った年月を手繰って、独り感慨にふけりました。