2016年11月24日
鶯系図(1) 板倉靹音
僕は当時一ぴきの鴬を飼っていた。もちろん「名古屋口」といわれる鳴き方の鳥で、この鳥の系図を逆にたどってみると鴬飼いの気質がむき出しになっていて苦笑を禁じ得ないのだが、しかし、人工的に作られた鳴き方が何十年、百年、二百年にわたって、どのようにして伝えられてきたかを考える上でのこれは多少の参考にはなるであろう。
ある日僕が午後の安静を守っていると、キーキーと、ひどく殺気にみちた鳴き声が聞えてきた。二羽の鴬を一つの籠に入れた時にしか聞かれない鳴き方だがと不審に思っていると、びっこひきながらQさんが籠桶をさげてひどく興奮して入って来て、早く籠を出せと言う。何はともあれ、二羽を籠に分けると、おれはもう鴬はやめた、この付け子のうち一羽は物になりそうだから大事にしろ、親鳥はいまぶち殺してきたと言う。訳をきいてみるとこうだ。