2016年11月25日
鶯系図(2) 板倉靹音
山公がQさんの所へ付け子に通っていた。毎朝やって来ては腰をおちつけて時間などおかまいなしである。それはいいとしても、いまの鳴き方はいただけないとか、おれの死んだ鳥はこうは鳴かなかったとか、付け親をくさしてばかりいるので、気の短いQさんはだんだん我慢ができなくなってきた。今日山公が帰ったときはまさに爆発寸前だったのだ。そこへ女房が台所から顔をだして、昼に畑から帰ってきても山さんがいて飯も食えないと文句を言った。
「なにっ!」というとQさんは親鳥の籠を女房の足もとにたたきつけた。僕のもらった鳥は付け親から早く離しすぎたので、一緒に飼っていた頬白のまねをしだしたりして、結局ものにならなかった。山公の付け子も同じ結果になった。