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2016年11月29日

鶯系図(4) 板倉靹音

 しかし、山公の鳥が鳴きだすとQさんはじっとしていられなくなった。彼の家の前を何気ない風で通ってはその声をきいた。そのうちに、どうも山公の家の様子が変なのに気がついた。門口の大八車にいつまでも稲束が積みっぱなしになっているのである。隣で聞いてみると、山公はひどい神経痛で動けないのだという。その日から鴬の世話をするQさんの目が異様に光りだした。彼は丹精こめて自分の鳥を付け子としての最上の状態にもっていった。十日ほどすると彼はその鳥を小さな籠に入れて風呂敷でつつみ、わら草履に足音をしのばせて山公の門口の大八車の稲束のかげにおき、二三時間ののちにまたそれを持ち帰った。それを十日ほど続けると付け子は実によく親鳥の鳴きを取った。
 その朝Qさんはずいぶん迷った。もう大丈夫だが、と思ったのだが、念には念を入れるか、ともう一日だけ出かけることにした。そして、そっと稲束のかげに風呂敷包みをおいた瞬間、ガラッと入ロの戸があいて「この泥捧め!」と山公が棍棒を振りあげた。だが、顔をしかめて、彼は柱につかまったまま動けなかった。Qさんは籠をわしづかみにすると、びっこひきひき落ちのびた。
 僕が当時飼っていたというのはQさんのこの鳥にその翌年鳴き方を教わった鴬である。



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