共立荻野病院コラム詳細
TOP > 共立荻野病院コラム一覧 > 紅葉(3) 結城哀草果
  • 診療科目一覧
  • 内科
  • 胃腸科
  • リウマチ・膠原病科
  • アレルギー科
  • リハビリテーション科
診療時間
  • 外来診療時間

    休診日
    月〜金 午前9:00〜午後12:00
    午後3:00〜午後6:00
    土・日・祝日・年末年始・夏季
    (3日間)
  • デイケア利用時間

    定休日
    月〜土 午前9:00〜午後4:00
    日曜・年末年始
  • 院内のご案内
  • 医師紹介
  • 共立荻野病院デイケアセンターフラミンゴ
  • 住宅型有料老人ホーム プメハナ

2016年12月5日

紅葉(3) 結城哀草果

 白鷹山は山形盆地の西に低く連なる出羽丘陵の主峰で、一千米級の山だが眺望がすばらしいので、私はこの山に山形盆地の展望台と名付けたこともある。そして白鷹山は二人には、生涯わすれられなくなってゐるが、それは或年私達がこの山に登って結ばれたからであった。その後二人は年に一度は必ず白鷹山に登ることを、暗黙のうちに白鷹山とも誓ってゐるのだ。二人はいま山川に沿ふ坂道を登ってゆくのだが、秋日が背後から照りつけるので、汗ばんで来た。それで私が羽織を脱ぐと、女はそれをたたみ風呂敷に包んで背負って呉れた。それは女が一途に私を労はる真(ま)心(ごころ)であって、私が東北の高山をすべて跋渉した力量などは、女の真心には問題にならぬらしい。山道が迂回したところに杉林があって、その下を水が潺湲(せんかん)と流れてゐるので、二人は交々腹這へになって冷たい水をのんだが、その水底のきらきらした青砂と砂のあたりをゆれる秋の日射しが、二人の心をたのしくした。しぼらく行った山ふところに、置き忘れたやうに稲田があって、そこに高く立つ山梨の独立樹に小鳥が集ってゐた。またその小鳥には関係なしに、男が一人余念なく稲を刈ってゐるが、物音ひとつしない山奥である。その辺から紅葉がだんだん濃くなって、見交す女の顔がうつくしくいかにも嬉しさうだった。

 秋山を二人ゆぎつつ心たのし上着(うはぎ)ぬぎ水を飲みては紅葉(もみじ)を誉(ほ)めつ
 山梨の独立樹ひときは紅葉(もみじ)して男一人が袋(ふくろ)田(だ)に黙(もだ)し稲刈る



共立荻野病院コラム一覧へ戻る