2016年12月6日
紅葉(4) 結城哀草果
いよいよ頂上、を仰ぐところまで来て二人は急勾配の長い石(きざ)階(はし)に息を呑んだが、幾度も息苦しさに立ち止りながらも、どうにか頂上に登り着いた。山上は朦々の霧雨で眺望は少しも利かぬので、二人はすぐさま堂宇に入って、身を寄せ合った。そして二人はかぎりなく幸福だった。その幸福は白鷹山にかけた誓ひをば二人ではたし得たからである。
直立すると仰ぐ石(きざ)階(はし)のぼり来て雲飛ぶ峰に手を執(と)り立てり
二人はいつさんに山を下って来て頂上を振り仰ぐと、動く雲のあひまに燃ゆる紅葉がうつくしく、女も立ち止って歎賞の声をあげた。
白雲の晴れし一瞬見たりけり白鷹山(しらたかさん)が燃やす紅葉(もみじ)を