2016年12月8日
鑑賞権の設定(1) 斎藤玉男
この頃鉄道沿線の広告看板の俗悪さが問題になっている。一字2メートル角ほどもある(従って横巾10メートル以上もある)字看板や、商品実物の数十倍もあるボットルの形などが、折角の新緑や紅葉の眺めを、どうすればジャマ出来るかと競い合うかのように、沿線に立ち並ぶのは全く以てやり切れない。
しかしどこが俗悪さの境いかとなると、場合々々で判定する外はない。また誰が如何なる規準で判定するかとなると問題は更にこんぐらかる。仮にその土地に因縁のある古人今人の和歌や俳句を巨大な立看板に仕立てて、隅につつましく商店か旅館の名が紹介してあるとして、それが果して俗悪でないかどうかの判定は一寸むずかしいであろう。