2017年1月16日
続鶯系図(10) 板倉靹音
浅井のおじいさんというのは、鶯にかけては不世出の名人であった。もと尾張藩の侍医の出であったが、一代に財産を蕩尽し、鶯のためには一介の小鳥屋になりさがって悔いなかった人である。玉司の系統の絶えたことをいたく歎いていたが、それに劣らぬ名鳥の今日なお伝っていたのを涙を流さんばかりに喜び、漢詩を贈って為さの労をねぎらった。為さもいたく感激したが、残念ながらその詩の意味が誰に聞いてみてもわからなかった。そこでお使者がたって浅井老人にその意味をうかがった。この漢詩の字句を筆者は知っているが、特にここに載せるほどのものではない。詩の内容は、森雨に閉じこめられたような長の歳月によくたえて、今日この妙山首を聞かせてくれた、洵に喜ばしい限りであるというほどの意味であった。