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2017年1月30日

随筆二題(1) 斎藤玉男

 うたのない存在

 ある詩人が語るのを傍え聞きした。「動物たちの中で爬虫類だけは不気味で親しめない。それは彼等に謡(ウタ)はもちろん、てんで声がないからだと自分流に解釈している」と。
 これは一般人にしても蛇やトカゲを生来毛嫌いする一つの理由とも言えると思うが、なかんずく詩人となると、謡のない旡声の存在物はひどく親しみにくいと感ずることは無理なく理解出来るとは思いやれる。それは詩人の感官が一般人よりも数倍繊細に出来上がっている箇条があるのではないかと考えられるからである。
 何人に限らず感官は聴官にしても触官にしても、嗅官、味官にしても、その機能はすべて受け身であるとして、詩人の場合は一般人が音なり香いなりとして感受する一歩手前の段階で、言わば第一印象が感受される寸前に、予覚(マエアジ)として感ずるものがあるらしい。それを詩人たちは一般人にも通有なものと始めから疑わないのでもあろう。



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