2017年2月2日
随筆二題(4) 斎藤玉男
ルーカス・クラナッハのヌード像と歌麿のそれ
サクセン選挙侯フリードリッヒの庇護の下に、ウィッテンベルグでマルチン・ルーテルと同僚であったクラナッハが、ルネッサンス初期のヌードの巨匠であったことが近年になって再認識されている。筆者は彼の作品に複製によって接するだけであるが、時代を超えた清新さを承認するに吝さかでない。絵画史家の中にはこれらの作品について「彼女たちが旧いゴチック世界の住民であることを告げている」と評し、別の評者はそのフォルムロージッヒ(個性をこめて形象性の薄いこと)性を指摘している。