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2017年2月7日

随筆二題(7) 斎藤玉男

 ルーカス・クラナッハのヌード像と歌麿のそれ

 クラナッハの裸婦体の輪郭と歌麿のそれを比べると、ポーズの相違は別として、後者において自然さと活達さに優っている。言わば解剖学的にもフォルムリッヒである。これは十六世紀のドイツに比べて、政治上の規制は別として江戸庶民の精神生活に或る形の自由が許された事情にも因るのであろう。
 但し歌麿については、ここでは主として版画について言っているので、輪郭や線条のもつ味の一半は版画師の技倆に功績を頒たねばならぬこと勿論である。賦色や暈(ボカ)しについても同じことが言える。
 要するに歌麿を扱こう限り、その画精神の本質の取り上げ方においては、別に本人が表明した典拠はなく、あの時代に本人がそんな意識をもちようもなかったとして、暗に自から擬した作品の高さの水準は、言わば作者の意識下の主張として、且つは仮に現代の評価基準に引き当てたとして、公平なところルーベンスとルノアールの中間に据えてもひどく失当までではなかろうかと言いたい。勿論これには幾多の異論のある所ではあろうが。



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