2017年2月10日
汽車二題(2) 山口誓子
1.丸山薫の詩
その私も気紛れに最先頭の車輌に乗ることがある。
前方を見てゐると、鉄路がぎらぎらひかつてゐるのに驚く。まるでサーベルの鞘みたいだ。
それよりも私の目を引き付けるのは運転手の運転である。動き出す時より求める時の方が面白い。
駅が見えると凡そ百メートル手前でエア・ブレーキをきかすがそれで停めるのではない。エア・ブレーキを二、三度きかしてやつと定位置で停まる。そこの加減が私などにはとても面白い。
そんなことを感心しているものだから最先頭で作った俳句はまだない。