2017年2月15日
汽車二題(5) 山口誓子
2.フランス美術展
私は西洋の油画に出て来る汽車に興味を持ってゐる。
マルケの描いた汽車、ゴッホの描いた汽車など直ぐ思ひ出す。ゴッホに汽車の画が二枚も三枚もある。
こないだ京都へ行つてフランス美術展を見たときも一枚一枚克明に見たから、汽車の画を二枚見つけた。シニャックの「アニエールの橋」とマルケの「ルーアンのパリ波止場」である。
シニヤックのは水彩画で走ツてゐる汽車を真横から描いてゐる。点描ではなく、ぼつとりとした描き振りだ。
マルケのは油彩である。図柄は明確には思い出せないが、河岸のやうなところに停つてゐる汽車ではなかつたか。例によつてマルケ風の脹れぼつたい汽車であつた。
汽車は一八二五年から動き出した。洋画に描かれてゐる汽車は新奇な素材として描かれてゐるのだ。
現代に汽車を描いた洋画など見たことがない。