2017年2月20日
食もの(3) 中川一政
大きなフラスコに入った葡萄酒が出る。コースを追ってやっと食べると後で豆腐位あるチーズが出る。毎晩変ったチーズが出る。チーズの種類というものは随分あるものだ。私達夫婦は毎日食べ残し、遂には手をつけずに隣にいたポルトガル人達に押しやって食べてもらった。葡萄酒もきれいに呑んでしまう。
フランスへ着くまでに私は食傷してしまった。
巴里では支那料理屋へ時々行った。牡丹屋と云う日本料理屋にも行った。南京米みたいな飯で、すき焼、味噌汁など食べられる。
アメリカ人も食べにくる。恐らく日本で食べたすき焼の味が忘れられず来るのだろう。
北大路魯山人はフランス料理の悪口を云っている。
1.パリは水がわるい。(その通り、石灰水で飲めば下痢する)
2.野菜も魚も古い。(魚を食べ出したのは近代であるから魚の扱い方を知らない。なぐられ、引きずられたような魚が並んでいる)
それで、美味い料理が出来っこないと云うのが魯山人の説である。もっともな説である。しかし、仏蘭西料理はそれを克服したところに本領があるのだと思う。