2017年2月28日
酒二題(5) 藤原義江
わたしも、酒の好きなことに於いては人後に落ちない、といって未だかつて酔っぱらった事は一度もない。だいたいイタリア等では教師のところでだらしない声を出すと「台所へ行って一杯飲んで来い」と叱られて、ぶどう酒の一杯も飲むこと再三である。酒を飲んだからと云って声がよくなるわけもないし、悪くなるとも限らない。問題は飲む程度だ。
酒も飲まず、うがいをしたり、吸入をしたり、薬を飲んだりしてそれに明け暮れている歌手もなかなか少なくないが、どうも大騒ぎをする歌手ほど大した事はない。
わたしに云わせれば、歌手に適量の酒は絶対に必要で、酒を少しばかり飲んだ為に声がいかれる人は、はじめから声などない人が多いし、ナスビを食べて声の出ない歌手は、ナスビを食べなくとも声は出ない。