2017年3月30日
現代文明と精神座談会(18) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
島崎 たとえば、ちょっとはずれますけども、草間弥生という、高名な抽象画家がおりまして、もと松本のいい家のお嬢さんなんです。この人は病的な素質がありまして、なにも自分のコンポジションを考えないで、こういうものを書いてやろうという考えなしに書いたものが、おのずからすばらしい抽象画になっている。それが発見されまして、いちばんはじめは式場さんあたりが発掘したんだと思うのですが、東京で個展をやりましてね。しかし、私は彼女に会いましたけれども「どうも自分の病的なものを売り物にされているようで、私はいやです」と言っていました。そのうちに病的なものがはずされちゃって、モダンアートの、ほんとうの芸術家として認められまして、アメリカに渡って、むこうで画商がついて、たいへんな財産家になって、もう日本に帰って来ないと言っています。むこうで草間弥生というとたいへんに有名で、高名な抽象画家らしいです。
丸山 そういうのは抽象画をやろうということでやったんですか。人目を惹こうという気はないんですね。
荻野 ほんものでしょう。