2017年3月31日
現代文明と精神座談会(19) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
島崎 これは残ると思うんです。十六世紀のボッシュやグリューネワルトみたいなものですね。
荻野 ゴッホなんかでも、一種病的と言えば言えますね。
尾崎 戦前関根正二というのがいましたね。あれ、気違いになったか、自殺したんじゃないですか。
丸山 「信仰の悲しみ」なんかね。
尾崎 そうそう。
島崎 今和次郎先生のお嬢さんで、今洋子さんの作品を、芸大の先生のお宅で見たんですけれども、これは驚いたですね。たれの影響も受けていない。たれの影響も受けていないでまったくその方のものなんです。とにかく今さんの許可は得ていないんですけれども、四、五枚借りて来て眺めているんです。そういうものがやはり残るんじゃないでしょうか。しかし、いまの詩人や、抽象画家なんかも、七、八十年前に生まれていたら、みな水気たっぷりのものを書いたんじゃないですか。感情移入ができるものでなければ絵じゃないというので、たれにもわかるような絵を描いたんじゃないですか。