2017年4月1日
現代文明と精神座談会(20) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
丸山 室生犀星がなくなりましたね。室生さんはほんとうの小説家じゃないとか、世の中が書けていないとか、素質が詩人的で小説家じゃないとか言われたんです。あなた方もそう考えられたことがあるでしょう。私もなるほどそうかなと半ば同感したことがあるんですけれども、しかし、亡くなってみると文壇の人として少いんじゃないかと思うんです。結局なんでもかんでもなにが書けていないとかなんとかじゃなくて、ほんとうに精いっぱいのものを書いていると思うんです。室生さん独得のユニークなものを……。小説なんか、小説を芸術品とすればそれでいいんじゃないか。世の中が書けていないとか、そういうものを書くんじゃなくて、もっとほかのものが大事なんでしょう。
尾崎 そう思いますよ。しかしそれを持ち出したら話にならないですよ。話にならないからある程度のところで言っているわけですよ。