2017年4月5日
現代文明と精神座談会(23) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
尾崎 悪文と一口に言いますが、悪文でもなにかの効果が出ている悪文と、箸にも棒にもかからない文章がありますからね。室生さんの方は効果を出している。
丸山 だから悪文という実感がないんです。そう言われればそうですけれどもやはりおもしろい。
尾崎 大所高所からみればそれでいいが、いったいこれはどこにひっかかって来るんだろうということになる。
丸山 佐藤春夫のような文章家に言わせれば、そういうことが出て来る。室生犀星は小学校の時作文ばかりうまくて、ほかのものの先生がいくら教えても覚えなくて、落第ばかりしていた。だからそういうことがあるんでしょうかね、どこかに。
斎藤 あの人がオーソドックスな学校の勉強しなかったということ、あの人の場合は強みになっていたんです。
丸山 あれ、勉強したら駄目だった。
斎藤 駄目だと思います。あの人の特色が殺されてしまって……。ですから学校教育というのは……。
荻野 よしあしですね。
島崎 絵でもそうでしょう。文学でもやっぱり……。