2017年5月24日
海を渡る(3) 佐藤東洋麿
スウエーデンの刑事パトリックもまた、しばしば海を渡る。事件はすぐ近くのヴァール島で起きた。火事それも放火の疑いのある火災の通知があったのだ。ヵミラ・レックバリの人気シリーズ八作目『死神遊び』(クラー ソン陽子訳、集英社文庫)の主人公である。パトリックは男やもめの刑事ユス夕とボートに乗りながら、考える。三十五年前にもそこでは不思議な事件があった。寄宿学校校長の一家が突然いなくなってしまった。よちよち歩きの末娘だけを残して。よそに預けられて育った末娘が三十五年たって戻り改装しようと床を剥がすと・・・・・・古い血痕が大量に見える。刑事は考える。いったい何になるのだろう? 昔の事件はとっくに時効だし、未解決だったとはいえこれから解決できるとは思えない。しかし現在になってこうした発見があるのはなぜなのか?パトリックの脳裏に不安の渦が広がっていく。