2017年6月15日
季 節 板倉靹音
せどは菜種の花明り
長い眠りからさめると
飄然として旅にでた
空では雲雀が歌っていた
丘をのぼり、森を抜け
とある池の浮草から
白雲に乗った
山は小鳥の祭典
ホロン・ホロン 杉の梢で瑠璃が囀り
目白の高音、山がらのツッピー
駒鳥はしっぽ拡げて愛の闘争
ジャア・ジャア嫉みがましいは何の鳥か
けたたましく鶯が沢をわたった
夜ごと焚火が水に映え
湖畔は声なき人のさざめき
裸の足がからみあって
岸べをまわる、まわる……
俺は少女を抱いて列を離れては
月にぬれて眠った
いつしか焚火は消えた
風が木の葉を染め
渡り鳥はすでに南に去った
静けさに耳をすませば
ひそかに灌木の繁みを縫って
チヤッ・チヤッキリキリ・キリキリ
漂鳥は人里へ帰り急いでいた