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2017年6月30日

溜め息の系図(1) 斎藤玉男

 一昨年か遠州三ケ日町の石灰採掘地で、先住民の人骨が発掘され、聞く所によればアイソトープ炭素分の測定から推算すると、ジャワ人骨よりは新しくネアンデルタール原人よりは旧いと言うことであり、石灰に埋没して居たので保存は良好であると言う。一面友人である先史人類学の長谷部言人君などによると、これは厳密に言う「出土」ではなく石灰分含有の水流に運ばれて現地に「漂沈」したので、それが一躯であるかどうか遽かに同定し難いとも言う。それはそれとして認めてよいであろう。
 それに関連して想い起されるのは筆者の郷里に近い城南村大室の古墳のことである。たしか筆者の十才頃明治二十四年前後と思うが、平山省斉大人が此古墳を踏査に東京から来られ筆者の祖父が案内役を勤めた。此人の養嗣子は成信と言って後に赤十字社長となった。

大人はその時
   顕晦時あって天意存す
   千秋の遺物自ら尊ときを知る

云々の一聯を作られ、祖父はこれを石版刷にして地域に配ったことを記憶する。これは羨道を備えた大石室で、何代目かの上毛君の陵と想定された。大人の詩は概念のまた概念をなぞったのであるにしても狙いは外ずれて居ない訳である。



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