2017年7月20日
途 上(トジャウ)(2) 小堀杏奴
何時もさうだが何か変つた事が起つて生活状態が一変すると少くとも三、四日は、日常生活の秩序がめちゃめちゃになつてしまひ、これでは今後一体どうしてやつていけばいゝのだらうと途方に暮れた気持になるのだが、一週間か十日も過ぎると何時か手順が決まつて一応の落着きが出て来る。今の私は、二軒ぶりの仕事を一人で引受けてゐる訳で、例へば朝六時に起き、炊事をして息子に朝食を食べさせ、大学へ出してやつた後、残つた者の朝食を済ませ、午前中に赤児の食器消毒と、おしめその他の洗濯、つまり娘の家の洗濯をし、その後我家の洗濯にとりかゝらねばならぬ。これが全部やつと終ると同時に昼食の支度と来るのだが、その上に私は原稿書きの仕事と言ふものがあり、例へば今日でも私は洗濯を一応見送り、その時間を仕事に宛て、午後の掃除をとりやめて洗濯をすると言ふ方法を取る。