2017年8月2日
山旅のたのしさ(6) 熊沢復六
発見された場所は、もとより人をよせつけるようなところではない。その昔、誰かが尾根道ででも落とし、それが何百年もの風雨に押し流され、埋没したものとしか考えられない。それにしても、誰が、何に使ったものだろうか。私は、考古学や、歴史学の知識には全くうといので、見当のつけようがない。無智なだけに、空想が自由に羽ばたいて、行きつくところを知らない。山野を駈けまわった先住民の姿が、いろいろな形で脳裡に浮んできて、はてしのない夢の世界をくりひろげてくれるのである。
Kさんには、調査を約束したので、名古屋大学の考古学研究室で調べてもらったり、歴史の先生方にきいたりしているが、今のところ答えはまだ出ていない。どなたかの御教示にあずかることができればと願っている。
山旅のたのしさは、決して高きをきわめることばかりにあるのでないことを、この旅はしみじみと教えてくれたのである。