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2017年8月29日

木のならぶ道 丸山薫

木 の な ら ぶ 道
    ――詩誌「四季」を弔う――
              丸 山  薫

いつからか

連れだって歩きはじめた

この道

なんの象徴(しるし)か

幻影のようにあとを追ってくる

沈黙の木の列

行く先々に待っている

不気味な木の列

ひとりひとりがその幹の片蔭に

つと身を入れると居なくなった

吸いこまれたように出てこなかった

中也も出てこなかった

道造も出てこなかった

信夫も出てこなかった

呼んでも二度と姿をあらわさなかった

やめてほしかったよ 妙ないたずら

せつなかったぞ 永久のかくれんぼ

あれら日々

空はまだ若かった

枝は頭上に新芽を差し交し

そよぎは小鳥の歌を抱いていた

僕ら その匂いとかがやきに酔い

騙された心をつなぎ合って歩いていたのに

しばらくして

朔太郎が居なくなった

犀星が消えた

そしていままた不意に

三好達治 きみまでが姿を隠した

みんな あれら木々の片側に――

道は涯ない

木はなおも誘うように枝を組み

しん(・・)と列んで突っ立っているのだが

歩いて行くのは僕ひとりだ

ひとりぽっちではもう隠れようもない

何処に外(そ)れようもないこの一本道

死とうらおもての

ながい抒情の並木道



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