2017年9月1日
首を回らせば(1) 斎藤玉男
羽鳥重郎、それは私の叔父で既に亡くなりましたが、終戦まで台北州の衛生課長をやって居り、専門は寄生虫学から疫学に亘って居りました。若い頃駒込病院の医局に居て赤痢の病原菌の報告を出しましたが、発表が志賀潔さんのそれより一ケ月遅かったと言う経歴をもって居ります。生涯マラリアと取組み、アノフェレス・ハトリイと学名を与えられた菌の新種を見付けたりしました。台湾ツツガムシ病の最初の記載者でもあります。同地の毒蛇の分類者であり、蛇毒の報告も出して居ります。大戦中は七十余才でタイ国のマラリア対策の顧問を勤めました。地味でマメで名利に恬淡と申せば一言で片付けられる性格でした。自叙伝「眠鰐回想録」が近く刊行の予定です。