2017年9月5日
首を回らせば(3) 斎藤玉男
第三の点は必ずしも似通ってばかりでもないとも申せましょうか。叔父は中学では植物学に惹かれたようですが、後には専門関係から植物と動物との中間とも言える細菌や、その宿主である昆虫と取組む一生を送りましたに対し、私は霊長類である人間の神経系を相手にする成行きとなりました。併し私一箇の設計では、余命が許せばですが、人間精神と昆虫以下の原始精神との間の系統付けを仕上げたい願がないでもありません。
ただ一つ結局叔父に及び難いと思うことはどんな局面に処しても「ああそうか。マアいいサ」との悠揚迫らない態度でした。叔父が終戦前後台北郊外に疎開した窮乏の最中に貫き通した研学精神もそれです。
「英雄首(コウベ)を回(メグ)らせば是れ神仙」と言う古い句がありますが英雄には限らず、われわれ凡人同士にもこの境地は残されて居るようです。