2017年10月2日
ポルト観光(1)プロローグ 影山喜一
どうしても行きたくて訪ねるわけではないというと、なんと不謹慎な言動とお叱りを受けるかもしれない。物事の進み具合によって落とし込まれてしまうのは、さほど目をむいて糾弾されることではないのではなかろう。あそこに出掛けたのだからついでに足を延ばそうと、思いもよらない場所に立ち寄った話はよく耳にする。そのような旅をアクシデンタル・ツアーと呼ぶらしい。
今回、ポルトに向かった経緯は、文字通り“アクシデンタル”と名付けるべきである。サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼の延長で簡単に踏み出せる観光地として選んだ。もちろんずっと以前から一度訪れてみたいと考えはしたものの、今後何回実行できるかわからない海外旅行の候補には上がらない。北スペインを西の端まで延々と歩いたが故に転がり出たプランではある。
そのまま北スペインのどこか、例えば土地勘のあるサンセバスティアンやゲタリアは、気心が知れてすぐにでも行きたいし、フレンチ・バスクのビアリッツ近郊やエスペレットも居心地抜群でなかなか捨てがたい。もっとも、逆の発想であれやこれやと検討することも十分考えられる。絶好の“ついで”でもない限り選択肢に登場しないからこそ、満を持してこれに決めようという行き方である。
結局、私は後者を選択したといってよさそうに見える。ポルトガルで長歩きの骨休めないし艱難辛苦に対する報償を果たそうとなったが、そうであれば嫌応なく即向かう先はポルトしかないと決まっているわけでもない。サンティアゴ・デ・コンポステーラ発のポルトガル方面行きのバスを調べると、3時間半でポルトまで直行する便があると明らかになり手を打った次第である。