2017年10月4日
カイロ雑記(1) 北川冬彦
ことしの1月から3月へかけてのヨーロッパ旅行中、コペンハーゲン、ハンブルグ、ベルリン、フランクフルト、アムステルダム、ロンドン、パリ、チューリッヒ、ミラノ、ベニス、フィレンツエなどは真冬の寒さで、殆どが曇天、太陽の光を見るのがめずらしいくらいであったが、ナポリ、ポンペイ、アテネでは早春の気候で、どんよりした太陽をだいたい仰ぐことができた。それがエジプトのカイロにくると、太陽は夏のように輝き、冬の服装では暑くてワイシャツ一枚になりたいほどだった。
カイロにくると、ガラリと変ったのは太陽ばかりではなかった。ヨーロッ.パの街々が、スペインのマドリッドを除いて、がっしりした地盤の上につくられ、すっきりした感がつよかったが、カイロの街は近代建築が並びたってはいても、地盤がたよりない感じでうわつき、うすぎたない。道行く人々も、アラビヤンナイトの盗賊めいた風態が多く、ガラリと変ったのである。妻の多紀は、「空気がへんに臭いわね」といって、外食をきらい、ホテルでばかり食事をとるという塩梅だった。