2017年10月6日
ポルト観光(5)プロローグ 影山喜一
医療介護・防災防犯・教育文化をはじめとする諸分野が、中央や少数拠点に集約され周辺のコミュニティーを疎外する。インフラの老朽化や人員不足は、種々様々なサービスの提供に不都合をきたし、もっぱら受給者の側に過度の移動負担を押し付ける。それよりもなによりも巨大な施設がいくつか建設される一方、ほとんどの生活圏は重要機能を欠いた非常に歪んだ構造となる。
日常気楽な様子で立ち寄れる場所にサービス供給場所がないため、各々の受給者は横のコミュニケーションを失い中央や拠点に向かう。かつては共同で支えてきた普請などの作業も、自治意識の衰退とともにいつしか成り立たなくなる。なにか不都合が生じる度に自分たちで対処するのではなく、ただ行政に対応するよう連絡を取るだけで済ませてしまう。ことほど左様に住民が、怠惰で無能な生き方しかできない存在になり下がる。