2017年10月17日
ポルト観光(10)第1章 聖地に別れを告げて §1 遠ざかる旧市街 影山喜一
サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街
さすがに空腹が限界で苛々し始めた頃、やっと頻繁に出入りする人影が薄っすら見えてきた。選択の余地などあろうはずがない。あそこに入るしかないと観念する。近寄って見ると奇麗な店である。ちょっと変わった造りで入ってすぐカウンターがあり、その横を左に真っすぐ進めばトイレが存在する。カウンターの前にテーブルが3つほど並ぶ。右に数メートル行くといくつもテーブルのある広い部屋で大人数が座れる。
今日も、定番と思ったけれど、ちょっと気分を変えてみる。クロワッサンとスーモ・デ・ナランハはいつもと同じであるが、カフェ・コン・レーチェではなくホットチョコレートを選んだ。いささか空気が冷え込んでいるので、身体の芯をぎゅっと温めたかった。昨夜は、無事のゴールインを祝ってたらふく飲みかつ食べた。空腹には違いないけれど、パワーは万全の状態である。試合開始直前のアスリートにとっては、胃の中を空っぽにしエネルギーは満タンがベストといわれる。これから動こうとする場合、満腹はかえって力の発揮を阻害する。さほど大冒険を手掛けるわけではないとはいえ、未知の土地の訪問はある種のパワーが欠かせない。したがって、習慣になっている腹を満たす朝食の営みが最低限実施されさえすれば納得するのである。