2017年10月18日
ポルト観光(11)第1章 聖地に別れを告げて §1 遠ざかる旧市街 影山喜一
サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街
巡礼者らしき姿もちらほらあるにはあったが、私たちのように大きなバックパックは持たない。宅急便でとっくに宿泊先まで送ってあるのか、終了の手続きの後に散策を楽しむのであろう。小さなデーバックやポーチを粋にぶら下げ、身軽にあちらこちらを飛び回ろうと張り切る。スマホでは満足できないらしく、本格的カメラを手にする姿が目立つ。いずれにせよ地元民は皆無といってよい。朝っぱらから他所者ばかりで賑わう店も面白い。
あまり無駄口をたたけないからかスタッフの顔にもいくぶん緊張の影が漂う。チョコレートのまったりした甘味が、冷気を拭うとともにパワーアップしてくれる。身体の内部に収まり切れない覇気が発露を求めて暴れ始める。それを鎮めるのがすこぶる快適である。トイレでゆっくり用を足し身軽になってまた歩き始める。
大学の脇をすり抜けると巡礼の門と出会う。それを潜ると旧市街が終わる。振り返ってみるものの前に背の高い建物が林立し大聖堂は隠れている。もう少しじっくり別れを惜しんでもよかったかもしれない。どうも私は最近、切り替えが早すぎると少し反省する。ベッドで目が覚めるや否や、意識はポルト一色に染まった。ともあれ、サンティアゴ・デ・コンポステーラは今回、あくまで巡礼のゴールに過ぎない。