2017年10月19日
ポルト観光(12)第1章 聖地に別れを告げて §1 遠ざかる旧市街 影山喜一
サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街
身体中の痛みに耐えながら苦楽を16日間耐え抜いたのは、路・川・木々・石・空・風・日光・空気などの自然と、挨拶を交わす巡礼者やバル・カフェで横に座る地元民の存在が大きい。主役は、途中で出会った自然と人間に他ならない。ノスタルジーは当然、それらや彼らに向かう。巡礼の紀行文のタイトルを『自然に帰れ』としたのも、自分の中で自然と人間の融合を図りたかったからである。
私は18年前、3日間ほどサンティアゴ・デ・コンポステーラに滞在している。寺院の歴史や建築、ガリシア文化の専門家であれば、何回訪れても何か月間滞在しても興味は尽きないであろう。けれども、しがない巡礼者、加えてスポーツ色の強い歩き旅に関心があるときては、際限なくずるずる留まるわけにはいかない。とりあえずゴールインを成し遂げれば、何はさて置き立ち去るのが礼儀である。
正確なところを白状すれば、私が巡礼者であるか否かも怪しい。しかし今は、証明書をもらって巡礼者気分に浸る。バスは10時の出発であるから、時間的にはまだだいぶ余裕がある。決して急がねばならない理由はないけれど、だんだんスピードアップするようで面白い。高速バスターミナルは一昨日泊まったアルベルゲの近くにある。そこまでの道順は、しっかりと頭に入っている。