2017年10月24日
肌に触れる(3) 佐藤東洋麿
さて痒いものは何とかしなくてはならない。何十年もまえからお馴染みのフジ薬局のおばさんに袖をめくって見てもらう、これはひどい乾燥ですね、皮膚科に行って診てもらったら、と言う。「とりあえず何か軟膏などありませんか?」と尋ねると、デキサンVG軟膏0.12%と書かれた物を出してくれた。ついでに小さな切り傷のようなものには、ドルマイコーチ軟膏も。デキサンのほうは車のなかで塗ってみると劇的に効いた。5分も経たないうちに痒みがどこかへ消えた。ドルマイのほうは、切り傷ではなく熱湯のいく粒かが掛かってできた粒やけどだ。蕎麦をゆでて冷水に移すときに料理用手袋を忘れると痕がつく。その部分に根気よく塗ると数日で痕が薄まりやがて消える。自分だけの秘かな愉しみ。
孫のいない私には幼児の食べたくなる肌も、晶子の誘う柔肌も、記憶の漏斗から滲みだしてあまりに遠い。けれどそれがどうした。私は湯上がりのバスローブに包まれて、ゆったりと2種類の軟膏を塗っている。