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2017年11月10日

ある絵とその作者(4) 斎藤玉男

 さてここに載せた作品の分類や品隲に就ては筆者はズブの門外漢であるが、筆者の専門からメキキして、この人の作品に何よりも先ず気付く箇条として、筆触の刻明さから当然将来される常同性と対称性である。そしてこれは分裂病的傾向人の作品には殆んど欠けることのない特色である。就中この人は分裂病的傾向どころか、既に四回の精神病院在院の経歴もあって、精神分裂病の寛解状態に始めて絵画に志したとすべきだと考えられるので、この点ゴーギャンやロートレックの経歴よりも一層特異なものとして扱うべきである。
 とすると、この人の作品で先づ目立つ箇条はその病的傾向よりも、その「健康さ」であろう。それはロートレックの作品に比べて遙かに健康である。もちろんそのデッサンには時代の傾向が強く影響はして居るが、併しゴーギャンのそれなどよりは寧ろ常識的である。但しその健康さには多分の「平凡さ」が加味されても居る。少なくとも「天才的」の香気は稀薄であるとする外はない。若しこの作品から放射されるエロスに見られる特色をとり上げるとすれば、ここには現代に通有な偏向としてハッキリとエートスと絶縁したパトスが浮遊する点であろう。
 この作者のこの作風に将来期待出来るものがありとすれば、それは恐らくは生来のパトス傭向が大脳細胞の緩漫な崩壊の上に何とはなしに作用する今後数年の時期に見られるその移行期の持味であろう。書家の中林梧竹が軽い中風に罹った後の数年にその書風が一段の深味を加えたように――。



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