2017年11月13日
教会と私の音楽(1) 大中恩
私達のちょっと先輩の音楽家達は、多少なりともキリスト教の教会に首をつっこんでいない人は無いのではないだろうか。つまりその時代には教会へでも行かなければ西洋音楽に接することは出来ず、大きな声でうたを歌うことなど考えられなかったのだ。私の恩師でもあり、戦時中の「海ゆかば」の作曲で有名な信時潔先生は、牧師さんの息子さんであり、山田耕筰先生もまた、敬虚なクリスチャンであるお姉さん御夫妻(ガンドレット恒子女史)の影響を受けて音楽家を志されたときいている。
先輩は……などと云ってみたが、かくいう私も日曜日には教会へ行くのが当り前と思っていたくらいの、いわゆるクリスチャン・ホームに育ち、母は亡くなったが、親爺は今でも教会のオルガニストをつとめて誇りとし、作曲家としても殆ど教会音楽しか作らないといってもいいくらいの教会に縁の深い生活をしている人間である。