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2017年12月12日

光明の后と鑑真和尚とリビドゥ[下]-4 斎藤玉男

 あれから星霜千二百年。幾多の頓挫や幾多の生長を経来った現代文化の形相はどうであろう。卒直に言って現代は何よりも先ず精神的アリエネーションの時代であり、自己の衷に渇仰心の日一日と涸れてゆくことに力ない好奇の眼を瞠りつつあるのが現代人である。更には渇仰の目標を我から破壊する努力のみが、最も有意義な文化活動であるからに錯覚しつつあるのが、現代人の姿であるとされても致し方ないであろう。
言って見れば、天.平人は衷から湧き上がる新鮮な情性の溢れに我と驚いて暮したと見えるのに、現代のお互いは既に己に情性の澗渇などには無関心であることを、窃かに誇りかにさえ受取ろうとするかと見られても致方ないかに見受けられもする。傍から「それでよいのか」と言う一人さえない。勿論時代につれて人性のナイビテは失われて行く。それにしても何がリビドゥの流れを今日の隅田川の如くドブ川化させたか、誰がそれにヘロイン様の公害物を投入するのを手柄の如く吹聴するか、改めて検討して然るべき段階であるのではないか。



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