2017年12月13日
佐野靖之 隠れぜんそく はじめにー1
近年、大人のぜんそく患者が増えています。
厚生労働省によれば、2000年前後からの約10年間で患者数は2倍に増加。ぜんそくというと子どもの病気と思われがちですが、実際は患者の6割が成人であり、さらにその中の8割が大人になってから患っています。軽く咳が出る、たまに息切れする、なんとなく胸が苦しいなど、自覚症状だけでは気づきにくい症例が多いのが特徴です。そのため、病院に行かず放置しているうちに重篤な発作が起こるようになるケースや、最悪の場合は発作が原因で死亡してしまうケースも少なくありません。実際に年間1550人を超える人がぜんそくで亡くなっています。
患者が増えている背景にあるのは、生活環境の変化です。現代人の暮らしは、実はぜんそくの危険因子であふれています。排ガスなどで汚染された大気、食品の添加物、pM2.5…-これらはぜんそくの原因となる体内の「アレルギ―反応」を誘発する因子ですが、普通に生活していればすべてをシャットアウトすることは不可能であり、誰が、いつぜんそくを発症するかわかりません。しかも、仮に罹患したとしても軽い咳が続く程度であれぼ自分も周囲もぜんそくであることに気づかず、明確な症状が表れたときには重篤化している・・・・そんな「隠れぜんそく」に見舞われる人が多くいます。
また、成人ぜんそくのほとんどは寛解することはあっても完治することはありません。吸入薬などで症状を抑えることはできますが、運動後や季節の変わり目などに発作を繰り返す人が多くいます。いつ重い発作に見舞われるかわからない、薬がなければ運動を楽しむことも眠ることもできない……そんな不安を抱えながらの生活が生涯続くのです。