2017年12月20日
肺気腫、息切れ症候群、逆流性食道炎……合併症で死に至る「ぜんそく」の恐怖-03 佐野靖之 「隠れぜんそく」-01章 発売元 株式会社 幻冬舎より
一方、成人ぜんそくの場合、自然に治るケースは1割以下と非常にまれです。なぜなら大人は、それ以上肺が大きく成長することがないからです。成人ぜんそくにかかった患者が治療をせずにそのまま放っておけば、肺機能は改善せず低下していくだけです。
また、成人として社会と関わるようになると、労働環境によってぜんそくが悪化することも多く、さまざまな弊害が生じます。
会社勤めをしていれば、ぜんそくだからといって仕事をすっぱりと辞めるということはできません。少々具合が悪いぐらいでしょっちゅう欠勤したり、遅刻や早退を繰り返すわけにもいかず、無理をしなくてはならない場面も生じてきます。仕事が終わらず病院の開いている時間に通院できないこともあるでしょうし、忙しすぎて薬の服用を忘れてしまうことも少なくありません。
あるいは、日々家事や育児に追われていて自分の時間を持つことができなかったり、親の介護をしなくてはならなくなるなど、働いていなくても自分でコントロールできない状況に置かれることが増えていきます。子どもの頃とは違って、「治療に専念できる環境」を整えることが困難なのです。成人して独立し、自分の力で生きていかなくてはならない、生活費も稼がなくてはいけない。そのような環境でぜんそくが悪化する人はたくさんいます。