2017年12月20日
ポルト観光(53)第3章 滞在初日 §2 マジェスティック・カフェ 影山喜一
マジェスティック・カフェ
銀のボールに盛った豆主体の煮込みと赤ワインに漬け込んだ鴨が運ばれてきた。煮込みのまろやかな風味と塩加減は、異国への旅の途中という現実を忘れさせる家庭的な暖かさに満ちる。そのまま夢見心地に寝入ってしまいそうになる。対照的に鴨のローストは、味に関連するすべての感覚を一転の曇りもなく魅了して止まない。一体どんなワインを合わせるべきであろうか。それこそソムリエに相談したくなる。とはいえ、先走ってうっかりソムリエを呼びでもしようものなら、コミュニケーション力の拙さが露呈するのは間違いなしである。ここはぐっと堪えておもむろに赤ワインを1つ頼むに留める。しかし、いざ手元に置かれたものは非の打ち所がない。カモミール紅茶とともに舌を弄んだチーズケーキが、ポルトの最初の夜を華々しく締めくくってくれた。