2017年12月26日
肺気腫、息切れ症候群、逆流性食道炎……合併症で死に至る「ぜんそく」の恐怖-07 佐野靖之 「隠れぜんそく」-01章 発売元 株式会社 幻冬舎より
最悪の場合は死に至ることもある
日本のぜんそくによる死亡者は、1995年の7235人をピークに、2000年4427人、2006年2778人、2010年2065人、2014年1550人と順調に減ってきています。これは吸入ステロイド剤の普及と一致しています。
しかし、ぜんそくで亡くなる人はいまだにゼロではありません。
例えば、当時50代のある患者は、働き盛りで、「仕事が忙しい」が口癖の方でした。忙しいからと理由をつけては診察に来ず、発作を起こして苦しくなったところで駆け込んでくるということを繰り返していました。当然、吸入ステロイド剤を吸入していなくて、気管支拡張の吸入薬のみを使用、非常に過敏な気管支の状態でした。その日は、出張からの帰りだったのでしょう。新幹線に乗っているときに発作が起こり、駅に着いてからそのまま救急車で、私が以前勤務していた病院に運ぼれてくることとなりました。駅から連絡してきたのは救急隊員ですが、そのときにはまだ息があり、話もできていました。救急車で病院までは普段は10分程度しかかかりません。しかしその日はひどい渋滞も起こっていたようでスムーズに来ることができず、到着までに40分ほどの時間がかかってしまいました。今か今かと待って、救急車がやっと到着したとき、その患者はすでに心肺停止の状態になっていました。正直、とても驚きました。重症発作はあったものの、救急車に乗ったときにはまだ息があり、話すこともできたのです。それが1時間も経たないうちに心肺停止に。私はすぐさま蘇生に入りました。外科医や麻酔医の応援も得て、挿管したり心臓マッサージをしたり、できる限りの手を尽くしましたが、気管支がギュッと収縮していて挿管した先の気管支から空気が肺の中に入っていかない状態が続き、男性はそのまま亡くなってしまいました。