2018年1月5日
肺気腫、息切れ症候群、逆流性食道炎……合併症で死に至る「ぜんそく」の恐怖-11 佐野靖之 「隠れぜんそく」-01章 発売元 株式会社 幻冬舎より
重度の発作は、息ができなくなり、死ぬのではないかと思うほど苦しいものです。立って歩くこともできず、しゃがんであえぐのがやっとという状態です。もっとひどいものでは、全身に酸素が不足してしまい、意識がもうろうとしたり、顔が蒼白になり、唇や手足が紫に変色する「チアノーゼ」という症状を起こすこともあります。
そのような激しい発作がたびたび起こるようになってしまっては、学校に通うことや仕事に就くことはまず無理でしょう。それどころか、外出することすらままならなくなり、家に引きこもらざるを得ない状況になってしまいます。あまりに重症の場合は、入院して治療に専念することになるのです。
私が診た患者の中には、「この人の人生はいったい何なのだろう……」と思わず考え込んでしまう人も何人かいました。このような方々の多くは若い男性でしたが、医師の言うことをまったく聞かず、たばこもスパスパ吸っているし、薬もまともに服用していないようでした。当然重症で、かろうじて寝たきりではないものの、仕事に就くことはできず、生活保護を受けている人もいます。その男性は、「もう一生生活保護でいいや」と開き直り、病気を治す気はまったくないようでした。ぜんそくはひどいままですし、これから治そうとしたとして、よくなることはほぼないでしょう。これでは、まっとうな社会生活を送れているとはとてもいえません。まだ若いのに、「この人に明るい未来はないな」と感じました。非常に残念です。
ぜんそくは、ある程度以上ひどくなってしまうと、症状をよくするまでに相当の時間がかかります。3年、5年という年単位になり、長いスパンを要します。
まずは重症の状態から抜け出すために、とことん治療に専念する必要があります。安静にしている状態、家でほとんど寝ていなくてはならないというような生活が、何年も続くこともあります。症状が改善してもそれで終わるわけではなく、中程度から軽症、そして症状が出ない状態になるまで、その後も治療はずっと続いていきます。