2018年3月23日
ポルト観光(109)エピローグ 影山喜一
とはいえ、すべてが賞賛に値するわけではない。物事には表ばかりでなく必ずや裏があるに決まっている。ポルトで特別のエピソードに立ち合いはしなかった。リスボンでは真偽はわからなかったけれども、ブラジル以外の旧植民地について疑問が浮かぶ。夕方、予約したレストランに向かう途中、土手の上に大勢のアフリカ系の人たちが立っていた。声を掛けたり指さしたり笑うわけでなく、ただ互いに語り合いながらこちらを眺める。それだけの話である。しかし、印象としては少なからず不気味に感じた。普通であれば家に帰って家族と団欒する時間帯を男性の群れが街角で佇むのは、私の穿った品定めかもしれないけれどやはり奇異と言わざるを得ない。ずっと以前、内戦中のモザンビークを取材したフリーライターの話が、頭の何処かに薄暗い影を落とした。