2018年4月6日
桜 平成25年の桜 桐村俊一郎
三月二十三・二十四日東京、亡き友のお蔭(偲ぶ会)で満開に遭う
水暗く豊かにうねる墨田川堤の桜今咲き満ちぬ
揺れゆれてスカイツリーの秀の影は彼岸を歩む我を追い来る
花見むと言間橋に集ひ来る老いも稚なも心せかれて
日曜の人出もさわに北ノ丸の園地に仰ぐ満開の花
靖国の公孫樹並木の奥処こそ人を迎ふるさくら花影
外堀の堤の花に酔ひゆけば足下を中央線の行き交ふ
四月八日、石山寺、この地に同期入社の集い
石山の花は嵐に半ば散り半ば残りて日にかがよへり
瀬田川の春を高みに眺むれば去(い)にし三十年(みそとせ)夢と思ほゆ
四月十二日、吉野山。上千本も大方散る
花あらむと上千本を恃み来て吉野の峯にあふるる人出
花残る木下に開く弁当の中に散りこむ二ひら三ひら
坂道を辿るわれらを慰むる水分(みくまり)神社の枝垂れ桜は
金峰まで登りつめたる老いの身を茶屋に養ふこの胡麻豆腐
四月十四日、高遠の桜まつり
高遠の城跡満てる桜木の花ははだれに散り敷き初むる
小彼岸のよじれて上る高枝に花咲き満ちて空を覆へり
見渡せば谷の桜の彼方なる南アルプス雪深みかも
落城の怨み鎭もり高遠の血染めのさくら朱を薄めつつ
杖突の峠に登る山かげの血染めの桜見る人もなし
六月二―六、七日 道南。叔母の手術に付き添い(伊達日赤病院)
登別汐見の坂の人重櫻左右の並木くれなひに満つ
人重桜散り敷く土に風吹けばなほ散りかかる伊達の街蔭
2013/4 (完)