2018年4月13日
妻の入院 2015年 6月 桐村欅軒
1. 北国ゆ深夜帰れる「昭和の日」妻は怪我して動けずに居り
2. 廃品に古いテレビを出す妻は階下ろし足の甲に落しぬ
3. 右足は脛まで腫れて爪先を着けば激痛身を貫きぬ
4. 明くる朝救急車にて猪名川の北の救急病院に入る
5. 待ち医師は沈思せる顔昆虫の肢体に乗れる院長なりき
6. 次々に救急車来て足のみの妻の診断午後に回さる
7. エックス線写真に写る踵骨の陥没著く距骨を離る
8. 腫れの引く連休明けに手術とて入院すれば父子家庭生る
9. 子の料理味如何より衛生の気になりしかど無事に生き継ぐ
10. 庭先の林に繁き鶯の大音声に呼ぶは頼もし
11. 踵骨の手術終りて妻眠り担当医師の声の明るさ
12. 背後よりチタンアロイの三本のピン長々と固定してをり
13. その夕べ初声聞きて想い出づ「まだ朔日にほととぎす」の句
14. 新聞に洗濯物にR1(アールワン)届けに通ふ猪名川小橋
15. 真先に吾に告ぐるは褒められてその日終へたるリハビリのこと
16. 車椅子松葉杖にてリハビリの妻の心は治癒にはやれる
17. 痛みなき日はこの秋のジャズダンスの発表会のこと思ふらむ
18. ピンを抜き化膿の残り点滴の抗生剤の利くを恃める
19. 唐突な退院宣言子は掃除われは剪定にはかに励む
20. 家にては杖手放して歩みつつ日ごとに還る妻の日常