2018年5月7日
――鳴風20首詠―― 夏鳥の歌 川西 桐村俊一郎
硝子戸を開けて夜具干すベランダに初音めでたき鶯の歌
朝に日に鶯聞けばわが宿の春から夏はこころ豊けし
朝な朝な雲雀の声に目覚めてはせはしき歌にしばし聴き入る
間を置きてヒ-と優しく鳴きつづく虎鶫来ぬ新芽の山に
鵺と謂ひ真夜に鳴くとふ虎鶫の昼山に呼ぶ声紛れなし
薄明の山より谷に寂しさの静かに満ちてトラツグミ鳴く
長く引く抑揚凄きアオバトを初めて聞きぬ終のひとふし
録音の友を慕ひて呼びに来し彼のキジバトぞあの歌ひ癖
朗らかな三光鳥の声たちぬ海渡り来し面影愛し
初声を聞きて嬉しやホトトギス頼み過ごさむ今年の夏も
ホトトギス時を分かたず啼く声にいつ眠るかと思ほゆるかも
闇に暗く子規居り丑三つに梟鳴きて真夜も親しき
高鳴きの合間に低く小綬鶏はピュ-ウピュ-ウと誰を呼び継ぐ
思ひきやコジュケイに歌の下手もありたどたどとして稽古に励む
青ゲラはピュオピ-ピュオと呼ぶ声を空に残して何処へか去る
冬も居る鵯(ひよ)は林の主なるを渡りの鳥に遠慮は見えず
けたたましあれも鵯かと妻に訊く持ち歌幾つなべてやかまし
鶯の声遠くなり子規を聞かぬ日はなし托卵のすゑ
鳴き交はすアカショウビンを窓に聞く霧雨の降る高原の朝
高山のねずこの森は雨にけぶり誰ぞコガラと鳴くあの鳥は
2014/7