2018年5月11日
桐村俊一郎 2016年10月
1. ポッカリと周りの雲を取り払ひ今宵小望の月明らけし (10/3)
2. 佳き月を告げれば妻は殊勝にもデッキに出でて眺めて居りぬ
3. 山に入る月にまつはる群雲に今宵仲秋の空を危ぶむ (10/4暁)
4. 名月の纏へる雲をオレンジに燗はせては白く退く (10/4)
5. 妻の言ふ管理道路の草引きに併せて垣の剪定をせむ (10/4午後)
6. 草引きに忽ち痛む腰椎をなだめつ汗の一刻を耐ゆ
7. アラカシを伐りて昨日の荒草と金網越しになだりに拠る (10/4午後)
8. 生垣の残り二面の剪定も粗々済めば募る雨足 (10/6朝)
9. 十六夜の雲に月無き一夜明け雨の到りて四時降りやまず (10/7朝)
10.くろがねの屋根輝きて居待月軒より高く円かなりけり (10/8暁)
11.明るさに誘はれ出つる星月夜雨後の沢鳴り鉦叩きの音
12.山の端の陽に染まりつつ西の方白める空になほ高き月
13.薄衣の透けゆく明けの西空にかそけく白き一片の月 (10/9朝)
14.小夜更けて門に出つれば月のぼり蟋蟀凛々とひときは高し (10/10)
15.登頂の記念にカメラ持ち来たる向井山麓若宮の里 (10/12朝)
16.海棠の丘に剪定用脚立得たりと立てて撮る向井山
17.坂道の藪椿咲くこの陽気膨らむ蕾逐次開かむ
18.浮葉繁る池に下り行く足音に声あげて跳ぶ牛蛙三つ
19.谷間(あい)の棚田でありし一枚に薄紫の紫苑咲き満つ
20.長雨のやうやく明けて朝焼けの山も真澄の空も懐かし
21.宵闇に膨れて白き月の貌こんな晩だね狼男 (10/26)
2016/10