2018年6月26日
専門医だけが知る、ぜんそくの治療法 カギを握るのはステロイド薬の「吸入法」-06 佐野靖之 「隠れぜんそく」-04章 発売元 株式会社 幻冬舎より
治療の根幹となるのは「吸入ステロイド」
ぜんそく患者の気道は、慢性的に粘膜がむくみ、上皮細胞は剥がれ落ちているため、粘膜への炎症細胞の浸潤が多い状態です。吸入ステロイドを服用することにより、気道の粘膜や筋肉のむくみは取れ、荒れた上皮細胞は徐々に修復されます。それにより、気道の内腔が広がり、炎症細胞の浸潤は少なくなるのです。これは吸入ステロイド剤が、アレルギー性の炎症を起こすサイトカインという物質の産生を抑えて、その結果組織障害を起こす好酸球を抑える作用によるものです。とはいえ、吸入し始めたからといって翌日からすぐに劇的に効果が出るというタイプの薬ではありません。時間をかけてゆっくりと炎症を鎮めていくため、最初の効果が表れるまで1週間程度の時間がかかります。ただし、ひとたび効果が表れて、気道のいい状態が続けば、ぜんそくの発作は起こりにくくなり、患者も自分がぜんそくであることを忘れてしまうような状態になれます。
対して、吸入ステロイド剤の使用を中断してしまった場合は、せっかく安定しかけた気道の炎症細胞の浸潤が再度激しくなり、少しの刺激でも発作が繰り返されるようになってしまいます。