2018年8月7日
かがし(案山子)-6 保田与重郎
なほここで「憲法」といつたのは、筆の勢だが、A「の「新憲法」が、正しくない、間違つてゐる、といへる真の日本の立場は、早川さんの「かがし」考をよめばよくわかる。「規範国語読本」をよめといふことである。またこのことを別の東洋の人道思想の本態から、科学者の明確さで指摘されたのは他ならぬ世界的数学者岡潔先生である。もつとも岡先生は、はつきりと新憲法を対象とされて、その根抵の思想の聞違ひを批判された。早川さんは「新憲法」といふことばを使はず、そんなものは全然無視した思考の上で真理の立場から新憲怯の根本の思想と文化観の間違を根抵的に摘発されてゐるのである。――しかしこのやうな云ひ方をきいて、新憲法をかがしといつてゐると想像するやうな気の早い人があれば、これが一番困るのである。新憲法の人文精神は、わが国のかがしの観念と本質的に異り、劣等な考へ方だといふことを、「規範国語読本」によつて知つてもらひたいといふのが、私の願ひである。また私の「学問のすすめ」である。