2018年8月23日
この太陽のかがやき(1) 小野十三郎
亀井勝一郎や、亡くなった堀辰雄が、大和の自然と風物について書いている本を読むと、わたしのように歴史感覚や伝統意識に欠けている者でも、大和という国はいまもこんなに美しい国なのかと、ちょっと自分の不明を恥じるような気持になる。このすばらしい大和国原、万葉の土地、そこにおもむいて、飛鳥、白鳳、天平の古き昔の遺跡をたずね、歴史と伝統の今日ある姿を眼のあたりにするためには、わたしが住んでいる大阪というところはまことにめぐまれていて、電車で生駒のトンネルを一つ通りぬけると、ものの三十分とかからずにそこはもう大和の国である。遠い地方からやってくる人は、前もってプランも練り、日数もあてて、つまり旅行ということでやってこねばならないのに、わたしたちときたら、何の用意もせず、思い立った日に、というよりも思い立った時に、いともかんたんに大和をおとずれることができる。車で阪奈国道を走れば、朝のうちにでも、斑鳩や西の京を一めぐりして帰ってくることだってできるのだ。